原価管理をExcelで続ける限界解体工事会社の支援で見た3つの課題

この記事でわかること
- 現場ごとのExcelでは、会社全体の原価分析ができない理由
- データが溜まらない・分析できない・振り返る時間がない、という3つの課題
- 処分費、スクラップ、人工の見立てで、見積の時点から利益が決まること
- ベテランの経験を、誰でも再現できる形で残す意味
- 想定読者
- 解体工事会社の経営者と、次の世代に会社を引き継ぐ立場の人
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私は株式会社Retonaの代表です。2020年から、産業廃棄物処理と解体工事を営む会社で解体部門のWEBマーケティングを担当し、のちに役員として経営にも関わりました。中小企業診断士の資格は、その前年の2019年に取っています。この間に20社以上の解体工事会社を訪ね、現場にも10回以上入りました。
その中で繰り返し感じてきたのが、解体工事で利益を残すことの難しさです。仕事は途切れず、現場も回っています。それでも決算を見ると思ったほど残っていない、という会社を何社も見てきました。この記事では、その原因の一つである原価管理について、支援の現場で見てきたことを書きます。
Excelで「現場ごと」には見えている
まず誤解のないように書いておくと、原価管理をまったくしていない会社はほとんどありません。私が見てきた中小の解体工事会社で最も多かったのは、1つの現場に1つのExcelファイルを作る形です。事務員の方が請求書や伝票の数字を入れて、現場ごとの赤字・黒字を見ています。
普段は、これで大きく困ることはありません。黒字の現場が続いていれば、誰もファイルを見返さないからです。問題が表に出るのは、赤字の現場が出たときです。「なぜ赤字になったのか」「同じような現場で次も赤字になるのか」と聞かれたとき、答えがベテランの経験と記憶の中にしかなく、数字で説明できません。
逆に言えば、会社全体の原価が見えるようになると、赤字の理由を数字で説明でき、次の見積に反映できるようになります。課題は、そこに至るまでに3つの壁があることです。
データが溜まらない
1現場1ファイルの管理では、現場が終わるとファイルがフォルダにしまわれ、それきりになります。10件、50件と現場をこなしても、会社としての数字は1つも積み上がっていきません。
ファイルの作り方が担当者や年によって少しずつ違うことも、積み上がらない理由です。費目の名前が違えば、あとから並べて比べることができません。去年の木造の現場と今年の木造の現場で処分費の割合を比べたいと思っても、まず数十個のファイルを開いて数字を拾い直すところから始めることになります。
分析できる人がいない
仮にファイルの形がそろっていても、複数のファイルから数字を集めて集計するには、それなりのExcelの技術が要ります。関数やピボットテーブルを使いこなせる人がいる会社は限られており、いなければ分析はそこで止まります。
私が支援先で「これが見えれば見積が変わる」と考えてきた分析は、次のようなものです。
| 見たい数字 | 分かること |
|---|---|
| 構造別(木造・鉄骨造・RC造)の粗利率 | どの構造の現場で利益が出ているか |
| 排出物ごとの処分費の比率 | 混合廃棄物やがらなど、どの品目が原価を押し上げているか |
| 現場までの距離・建物の大きさと利益率の関係 | 遠い現場や小さい現場を、いくらで受ければ採算が合うか |
| 委託先ごとの工事費用 | 同じ作業で、どの協力会社にいくら払っているか |
こうした数字が分かれば、見積の時点で単価に反映できます。どれもExcelで出せないわけではありませんが、出せる人がいなければ、会社にとっては無いのと同じです。
振り返る時間がない
最後は時間です。解体工事会社の経営者や現場の責任者は、日中はほとんど現場にいます。現場が終われば請求書を出し、すぐに次の現場が始まります。振り返りをしている会社でも、せいぜい現場ごとに1回、数字を眺める程度というのが、私の見てきた実態です。
振り返りが続かないのは、怠けているからではありません。集計に手間がかかる仕組みのままでは、忙しい会社ほど振り返りの時間が取れなくなります。集計そのものを人の手から外さない限り、この課題は解消しません。
利益は見積の時点でほとんど決まる
データが溜まって何ができるようになるかといえば、私は見積の精度が上がることが一番大きいと考えています。解体工事の利益は、工事が始まってから削れる部分よりも、見積の時点で決まってしまう部分のほうが大きいからです。特に差が出るのは、次の3つの見立てです。
処分費の見立て
私が見てきた現場では、処分費は原価の3割以上を占めていました。原価の中で最も大きな費目の一つでありながら、どの品目がどれだけ出るかを事前に見立てていなければ、見積は基本的に外れます。
過去の現場で、品目ごとに見積で見込んだ数量と実際に出た数量を並べておけば、構造や築年数が近い現場の実績を、次の見積の根拠にできます。
スクラップの見立て
鉄くずなどのスクラップは、売却すれば雑収入になります。私の見てきた範囲では、200万円規模の工事で20万円近い雑収入が出るケースも珍しくありませんでした。工事金額の1割近くにあたる金額です。
ただ、これを見積の段階で織り込んでいる会社は、私の見てきた範囲では限られていました。「スクラップが出て、たまたま利益になった」という話はよく聞きますが、偶然の利益は次の現場で再現できません。どの構造の建物から、どのくらいの金額のスクラップが出たかが記録されていれば、見積の段階で価格に織り込むかどうかを判断できます。
人工の見立て
人工が見込みより増える原因として多いのは、手壊しの範囲が想定より広かった場合です。もう一つ、見落とされやすいのが天候による待機です。雨で作業が止まっても、職人の給与は発生します。こうした待機の日数も、過去の現場で記録しておけば、季節や工期に応じて見込みに入れられます。
人工単価そのものの出し方は、人工単価の計算方法|給与を日数で割ると小さく出る理由で解説しています。
ベテランの経験を、誰でも再現できる形で残す
ここまで読むと、ベテランの経験や勘は要らないと言っているように聞こえるかもしれません。私の考えは逆です。現場を見て、この建物ならこのくらいの処分費が出る、と分かる経験は、解体工事会社にとって最も価値のある財産です。
問題は、その経験がその人の頭の中にしかないことです。解体工事会社でも、代替わりで若い世代に会社を引き継ぐ場面は少なくありません。中小企業診断士の立場から見ても、事業承継で最も引き継ぎにくいのは、こうした見立ての力です。ベテランの見立てが数字として残っていなければ、引き継ぎのたびに会社の見積の力が落ちていきます。
経験を、誰でも再現できる形に落とし込むことです。私はここに原価管理の本質があると考えています。仕事を仕組みにできるということは、その仕事を本当に理解しているということでもあります。
これからの解体工事会社に必要なこと
経験だけで仕事をする会社は、これから先、生き残るのが難しくなると私は考えています。ITやAIを使いこなして業務を効率化し、利益をきちんと作れる会社が、これからの時代に残っていく会社です。
ただ、解体工事業界でこれに本格的に取り組んでいる会社は、私の知る限りまだ一部です。ライバルが少ない今だからこそ、一歩先に動くことがそのまま差になります。周りと同じことをしていては、会社は成長しません。
Excelで続けるなら、このひな形から
Excelでの管理を続ける場合も、単価表と日報、領収書を分けて持ち、現場ごとに集計する形にしておくと、原価と利益を工事の途中で確かめられます。この記事で紹介した考え方で作ったひな形を、無料でお送りします。
現場ごとの原価と利益がわかる、Excelのひな形(無料)
単価表・日報・領収書の金額を入れると、現場ごとの原価と、見積に対して残っている利益が表示される原価管理表です。メールで、ダウンロード先をお送りします。
メールをお送りしました。数分たっても届かない場合は、迷惑メールのフォルダもご確認ください。
送信できませんでした。お手数ですが、入力内容をご確認のうえ、もう一度お試しください。
解体BASEで、何が変わるか
解体BASEは、ここまで書いた3つの課題を解消するために作りました。
日報と領収書から入った原価は、すべての案件で同じ形のまま会社のデータとして残ります。1現場1ファイルのように、現場が終わるたびにフォルダにしまわれることはありません。
分析のためにExcelの技術も要りません。完工した案件の粗利率、費目ごとの原価構成比、月ごとの推移、解体面積別の採算を、集計の操作なしで画面に出します。見積で見込んだ原価と実績を費目ごとに並べる画面もあり、処分費の見立てがどれだけ外れたかを案件ごとに確認できます。スクラップの売却収入も、案件ごとの雑収入として記録できます。
構造別の粗利率、現場までの距離と利益率の関係、委託先ごとの工事費用といった切り口は、画面には出ません。同じ形で溜まったデータから、ご依頼に応じて当社が抽出してお渡しします。1現場1ファイルのExcelでは、ここまでの集計は現実的ではありませんでした。
集計の手間もかかりません。現場の担当者は日報で、工事現場・出勤した職人・重機を選ぶだけで、金額は会社が登録した単価から自動で計算されます。
職人の方がスマートフォンの入力に慣れていない会社もあると思います。使い始めは、私が伴走します。単価の登録から日報の回し方まで、現場が無理なく続けられる形になるまで一緒に整えます。
実際に導入した会社では、原価が自動で集計され、それを社内のみんなで見るようになったことで、社員一人ひとりの原価への意識が高まりました。数字が経営者だけのものではなくなったことが、一番の変化だったと感じています。
最後に
ここまで書いてきたことは、どれも難しい話ではありません。処分費を品目ごとに見立てる、スクラップを見積に織り込む、終わった現場を振り返るといったことは、手間さえかければExcelでもできます。
それでも、実際に続けている会社はほとんど見かけません。日中は現場に出ていて、分析はどうしても後回しになります。処分量の予測も、本気でやろうとすれば過去の現場を一件ずつ調べ直すことになります。足を止めているのは、やる気より手間のほうです。
その手間を技術で引き受け、アプリを開けば数字が分かる状態をつくることに、解体BASEの意義があると私は考えています。言葉で説明するより、実際の画面を見ていただくほうが早いと思います。
原価管理の具体的な進め方は、解体工事の原価管理と利益率|利益はどこで消えるのかで解説しています。
当社が提供する解体工事会社向けのアプリ解体BASEでは、日報と領収書から案件ごとの原価が自動で集まり、完工した案件は会社全体の粗利率や、原価の内訳、解体面積ごとの採算にまとまります。導入のご相談は、当社代表が直接お受けします。仕事を受けるたびの手数料は0円、月額30,000円(税抜)です。
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